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エプソン、顔料系インク使用の新技術“μ-CRYSTAテクノロジー”を発表


2000年6月27日

セイコーエプソン(株)は、27日、新開発の顔料系インクを使用する、インクジェットプリンターの新機種を発表した。同社が5月にドイツで技術発表した“μ-CRYSTA(ミュークリスタ)テクノロジー”を採用した初めての製品となる。B0ノビサイズ(幅1118mm)の出力が可能な業務用大判プリンター『MC-9000』、個人向けA3インクジェットプリンターの最上位モデル『MC-2000』など、合計4モデルを用意。6月30日より順次出荷を開始する。

μ-CRYSTAテクノロジーを採用した、エプソンのインクジェットプリンター群。専用紙との組み合わせで、140〜200年の長期保存が可能だという
μ-CRYSTAテクノロジーを採用した、エプソンのインクジェットプリンター群。専用紙との組み合わせで、140〜200年の長期保存が可能だという



長期保存が可能で、色再現性の高い新しいインク技術
“μ-CRYSTAテクノロジー”は、電圧を与えると変形するピエゾ素子を利用した同社のヘッド技術を中心とした“エプソンフォトマッハジェットテクノロジー”に、新開発の顔料インク“μ-CRYSTAインク”を組み合わせたインクジェットプリンター用技術の総称。15年程度と短期間で退色が進む、従来の“染料系インク”ではなく、耐光性の高い顔料系インクを採用することで、長期保存を可能としたのが最大の特徴。同社のテストでは、専用紙との組み合わせで、140〜200年程度の保存が可能だという。

一般に、色材が溶剤に固まりとして存在する顔料系インクは、光による分解に強く(耐光性が高い)、印刷後用紙に色が定着するまでの時間も短い(色安定性が高い)というメリットを持つ。反面、色材が溶剤に溶けた状態で存在する染料系インクに対し、約10μm(10万分の1m)程度と比較的大きな色材の粒が印刷面に直接置かれるため、摩擦に弱く、粒子のサイズにバラツキが生じるため色再現性に劣るというデメリットを持っていた。

そこで、同社は顔料系インクの色材を染料分子レベルとほぼ同じ水準の0.1μm(1000万分の1m)に微粒子化し、透明な樹脂で覆う“マイクロカプセル化”技術を開発した。カプセル化した微粒子は溶剤内で互いに反発し、均質な分散が保てる。また、カプセルの樹脂は、用紙への着弾時に溶け出し、色材が用紙に浸透するのを助け、乾いた後は色材を用紙にコーティングする役割も果たす。

これにより、従来顔料系インクが苦手としていた光沢系の用紙にも印刷が可能になったほか、表面が樹脂で覆われているため、摩擦の影響を最小限に抑えることができる。また、表面が平滑なため光の乱反射が少なく、染料インクに引けを取らない発色と色再現性を実現したという。

業務用大判プリンターを筆頭に4機種をリリース
エプソンは、μ-CRYSTAテクノロジーを、当初は屋外での高い保存性が必要な大判のグラフィックデザインやホームDPE機器を中心とした、業務用大判プリンター、ハイアマチュアカメラマン向けのインクジェットプリンターに採用していく予定だ。

今回リリースされたのは、ホームDPEユーザーをターゲットにした個人用A3プリンターの『エプソン μ-CRYSTA MC-2000』、展示用のディスプレーやカラープルーフなどプロシューマーをターゲットにした、A3ノビサイズ対応の『エプソン MAXART μ-CRYSTA MC-5000』、A0ノビサイズ対応の『同 MC-7000』、B0ノビサイズ対応の『同 MC-9000』シリーズの4モデルとなっている。

エプソン μ-CRYSTA MC-2000
エプソン μ-CRYSTA MC-2000



個人用途の最上位モデルという位置付けのMC-2000は、染料インクを採用した『PM-3300』とほぼ同等のスペックを搭載。解像度は1440×720dpi。インクはCMYK+ライトシアン、ライトマゼンタの6色インクを使用。89/100/210/329mm幅のロール紙に対応したフチなし連続プリント機構“Photo Launncher”を装備している。対応する用紙は、MCマット紙、半光沢のMC写真用紙、MC光沢紙、MC画材用紙の4種類で、ランニングコストはL版サイズで約50円、ワイド四ツ切りで381円と銀塩写真よりも安価。インターフェースは、パラレルまたはUSBで、Windows 95/98/2000/NT4.0、MacOS 8.1以降に対応する。価格は14万8000円で、6月30日の出荷を予定している。

エプソン MAXART μ-CRYSTA MC-5000
エプソン MAXART μ-CRYSTA MC-5000



MC-5000は、染料インクを使用した『PM-5000C』のμ-CRYSTA搭載モデルで、ヘッドのノズル数を各色64本から同96本に増やすことで、印字速度を従来の約2倍となる1.2分(A3サイズ1枚あたり)に向上。インク滴のサイズを打ち分けることで粒状感減らすマルチドットテクノロジー(MDT)を採用している。解像度は1440×720dpiで、6色インクを使用。インターフェイスはパラレルまたはUSBで、オプションでEthernetボードを用意。対応OSはWindows 98/2000とMacOS 8.1以降。ランニングコストは、A3サイズ1枚あたり44円。MCデザイン光沢紙、MC画材用紙など5種類の用紙に対応する。価格は34万8000円で、8月下旬の出荷を予定している。

エプソン MAXART μ-CRYSTA MC-7000
エプソン MAXART μ-CRYSTA MC-7000



MC-7000とMC-9000は、それぞれ『PM-7000C』と『PM-9000C』をベースに開発された製品で、インクの種類とそれに伴うヘッド部分の変更以外はほぼ同等のスペック。解像度は1440×720dpiで、独立した6色インクを使用。インターフェースはパラレルまたはUSB。インク容量とランニングコストはMC-7000が各色110mlで253円(A1サイズ1枚あたり)、MC-9000が同220mlで350円(B1サイズ1枚あたり)。印字速度は、それぞれA1カラー1枚あたり9分/17分。対応OSはWindows 95/98/2000/NT4.0、MacOS 8.1以降。MC-7000の価格は59万8000円で、8月下旬出荷。MC-9000は価格129万8000円で、8月下旬の出荷を予定している。

エプソン MAXART μ-CRYSTA MC-9000
エプソン MAXART μ-CRYSTA MC-9000



また、MC-7000/9000にソフトウェアRIP(Raster Image Processor)の『ソフトリッパーPRO』(Mac版のみ)を同梱したパッケージも用意。価格はそれぞれ74万8000円/154万8000円で、2000年秋の出荷を予定している。また、PM-7000C/PM-9000Cのユーザーに対し、使用するインクを変更するサービスも行なう予定で、価格はそれぞれ20万円/40万円。

会場には、μ-CRYSTA対応のプリンターを使用して出力した作品が数多く展示されていた。普通紙での使用が難しいため、コンシューマー市場での本格的な参入は、まだ先になりそうだが、画質的にも素晴らしく、期待したい技術だ
会場には、μ-CRYSTA対応のプリンターを使用して出力した作品が数多く展示されていた。普通紙での使用が難しいため、コンシューマー市場での本格的な参入は、まだ先になりそうだが、画質的にも素晴らしく、期待したい技術だ

(編集部 小林久)


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