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NEC、新型パーソナルロボットを発表


2001年3月21日

日本電気(株)は21日、聴覚や視覚を持ち、人を識別できる新型パーソナルロボット『PaPeRo』(パペロ)を開発したと発表した。

PaPeRo
新型パーソナルロボット『PaPeRo』。名称はNECの目指すパートナー型パーソナルロボット(Partner type Personal Robot)の各単語の頭2文字を取ったものという

パーソナルロボット『R100』がNEC研究所の外に出た!

半導体技術やコンピュータ技術の進歩により家庭向けの音声認識や画像認識、ロボット制御が発達したことを受け、NECはこれらの技術を利用した家庭向けの面白い製品を研究するべく、'97年1月より試作第1号機『R100』の開発に取り組んだ。'99年7月に発表されたR100に対しさまざまな方面から多くの反響があったため、NECは'99年8月より次世代機となる試作第2号機『PaPeRo』の開発に着手、本日の発表に至ったという。

R100
こちらは試作第1号機の『R100』。基本デザインはPaPeRoにそのまま踏襲されている

現在、各企業がさまざまなロボットを発表しているが、NECが目指すのは“家庭で人と暮らせるロボット”。人とのやりとりを重視し、そのために“相手が誰か分かる”“相手の言うことを理解できる”“ロボット自身が個性を持っている”“人に何かを与えられる”といった部分に重点が置かれ、人のパートナーとなって一緒に暮らせるロボットとなっている。

R100は、ロボット本体のほかに別途パソコンや無線ターミナルが必要であったほか、信頼性や安全性、使い勝手などに問題があり、NECの研究所から外に持ち出せなかった。今回のPaPeRoは、R100と比較して高さが44cmから38.5cmへ、重量が7.9kgから5kgへとひと回り小型になったほか、すべての処理を本体内部で行なえるため、どこにでも持ち運ぶことが可能となっている。また、やりとりのバリエーションも大幅に増加し、安定性や認識性能も向上したという。

PaPeRoカラーバリエ
PaPeRoのカラーバリエーション。現在試作機として30体が用意されているという

CCDカメラで画像認識、ワイヤレスモデム内蔵でインターネット接続も

両目部分にCCDカメラ(左右それぞれ1つずつ)を埋め込んでおり、これが視覚センサーの役目をする。物体を避けながら歩いたり、人を見つけて距離を測って近づいたり、人を追いかけたり人を覚えたりする。また口と両目、両頬、両耳部分に表情を表わすためのLEDを装備する。耳のLEDはPaPeRoが人の声を聞いている状態を、目のLEDはPaPeRoが人を見ている状態を表わしている。人を探しているときは目のLEDが緑色に点滅、人を見つけると緑色の点灯状態となり、人の顔を見つけるとオレンジ色に点灯するようになっている。

PaPeRoアップ
本体構造は既存のノートパソコンをベースにしている。ワイヤレスモデムも内蔵し、無線経由で電話回線にアクセスし、インターネットに接続可能。ダイヤルアップ接続なところが何だか健気

聴覚センサーは、音源方向検出用マイク×3を胴体の首回り部分に、音声認識用マイク×1を頭部にそれぞれ内蔵する。音源方向検出用マイクにより、3つのマイクに到達する音の時間差を計測して声の方向を推定し、音のした方向に振り返るようになっている。

さらに、CCDカメラの死角に入っている物体や突然飛び出してくる物体にぶつからないように物体との距離を計測する“超音波センサー”を胴体の前面に3つ、背面に2つ搭載する。前方の段差を検出する“段差検出センサー”を胴体の前面下部に、自分が持ち上げられたことを検出する“持ち上げセンサー”を底面に備えている。

側面
側面の様子

そのほか、頭を叩かれたことがわかる“頭たたかれ検出スイッチ”と、頭をなでられたことがわかる“頭なで検出センサー”をそれぞれ頭部に搭載する。PaPeRoは、頭をなでられると喜んで、なでた人を好きになる一方、頭を叩かれ続けるといじめられたと感じ、相手のことが嫌いになる。

背面
背面の様子

モーターは4つで、足が2自由度、首が2自由度となっている。音声出力用スピーカー×2は胴体部の前面左右に搭載している。電源スイッチは胴体前面の中央にある。足は前輪×2と後輪×1の計3輪。2つのモーターで前2輪を駆動し、後輪はキャスター。移動速度は最大で毎秒20cm。頭部は2つのモーターで上下、左右に回転する。

画像認識技術は、床面と物体をリアルタイムに区別しスムーズに移動するための“障害物検出処理”と、人物の検出や追跡、識別を行なう“人物検出識別処理”を備えている。音声処理技術は、内蔵した3つのマイクから360度方向の音源方向検出を行なう“音源方向検出処理”、650語の音声入力が可能な“音声認識処理”を搭載する。

また、ワイヤレスモデムの子機を内蔵しており、ワイヤレスモデム本体を電話回線に接続することで、PaPeRo内部の子機を通じて無線接続でインターネットにアクセスできる。さらに、外部のパソコンを利用して動作/行動プログラムをPaPeRoに無線で送信することも可能。パソコン用ソフトとして、PaPeRoの動作パターンを作成できる『動作エディタ』と、対話/行動シナリオを作成できる『シナリオエディタ』が用意されている。そのほか、インターフェースとして、主なTVメーカーの赤外線リモコン信号を発信するリモコン信号送信部や、TVへ接続できる画像/音声出力部、USBコネクターを備えている。

エディタ画面
動作エディタとシナリオエディタの画面イメージ

人を識別し、相手によって反応が変化

PaPeRoは、人と話していないときに自分で勝手に動き回る“お散歩モード”と、人がみつかったときに人と話をする“お話しモード”が用意されている。

お散歩モードでは、画像認識と超音波センサーを利用し、家具や物を避けながら部屋の中を勝手気ままに動き回る。伝言を持っていたり電子メールが届いたりした場合は、その人を探し、見つからなければうたた寝する。人がPaPeRoに呼びかけると、音源方向検出機能によって声のした方向に振り返る。画像認識で人を見つけると、両目部分に内蔵されたカメラとステレオ処理でその人との距離を測り、近づいてその人の顔を識別、誰か分かるとその人の名前を呼ぶ。人の顔は10人分まで識別可能。相手が知らない人や、PaPeRoをいじめてPaPeRoに嫌われている人だと、PaPeRoは逃げてしまうこともある。

人を認識すると、PaPeRoはお話しモードになる。R100の得意技でもあったダンスはもちろん、なぞなぞやおみくじ、だるまさんがころんだといったさまざまな遊びを披露できる。また、TVの電源ON/OFF、チャンネル変更、音量変更などの“TVリモコン”、音声メッセージを録音し、メッセージを伝える相手を見つけると音声を再生する“伝言”、電子メールの受信を知らせる“メール受信”、現時刻のお知らせ、タイマー、目覚ましといったことも可能。認識する言葉は約650種類、PaPeRoが話す言葉は約3000種類となっている。これらの数は技術的な制限ではなく、現在行なえる人とのやりとりで必要な言葉の数がこの数字だという。さらに、新しい動作や対話、行動などのプログラムをインターネット経由でPaPeRoに取り込むことも可能。

デモ1
発表会で行なわれたデモ。歩き回った後、知っている人(NECのプロジェクトマネージャーである藤田善弘氏)を発見、「よっちゃあん」と子供っぽいかわいい声で話し掛ける。よっちゃんから、じゅんちゃんへの音声メッセージを録音し、じゅんちゃんの元へ
デモ2
じゅんちゃん発見。「じゅんちゃあん」と呼びかけ、「伝言が1件あるよ」と知らせる。じゅんちゃんが伝言を聞くと言うと、先程のよっちゃんのメッセージをそのまま再生する

画像認識により人の顔を追いかけ、常に人の顔の方向を向いて話をしようとするようになっている。また、叩かれたりなでられたりしたことも分かる。PaPeRoは感情や人物ごとの好感度/親密度を持っており、人のPaPeRoに対する接しかたや、好感度などによって、PaPeRoの反応や行動が変化するという。また、家族の性別や誕生日を覚えさせることが可能なほか、PaPeRoの相手をする頻度や話のやりとり、PaPeRoからの質問への回答なども記憶しており、それらの情報をベースに相手によって話す内容や反応が変わるようになっている。

デモ3
特技の1つであるTVの操作。「TVつけて」と言うと「OK!」と返事をし、TVの電源をONにする。「NHK」など局名を指定するとそれに合わせてチャンネルを切り替える。音量の調整も自由自在。いつでも相手の顔を見て話したり行動したりするところがかわいい。そのほか、自分で音楽を鳴らしながらくるくる踊る“ダンス”や、頭のスイッチを押すとランダムで結果を言う“おみくじ”“さいころ”、さらには“なぞなぞ”を披露。「ベートーベンがラーメンを食べてひと言。さて何といったでしょう?」……すみません、わかりません

内部構造はノートパソコン

PaPeRoの内部は、既存のノートパソコンと同様の構成となっており、CPUにCeleron-500MHzを採用、6GBのHDDと192MBのメモリー(DRAM)を搭載している。上記の各種センサーやリモコン信号送信部などは内部でUSBインターフェースで接続されており、CCDカメラはIEEE 1394インターフェース接続となっている。センサーなどのすべてのインターフェース入力はCeleronチップで処理しているという。また、HDDが壊れたときのバックアップ用にFlashメモリーチップも内蔵している。OSはWindows 98。

本体サイズは、幅24.8×奥行き24.5×高さ38.5cm、重量は5kg。電源はリチウムイオン充電池で、連続稼働時間は2〜3時間。電池残量が少なくなると、人に向かって「おなか減った」と言い、残量が少ないことを知らせる。電源ケーブル(ACアダプター)を通常の電源コンセント部に差し込むと充電を開始、充電中は足の動きは止まるが、頭部などは通常通りに動き、話したりすることが可能。

ノートパソコンをベースとした構成について、NECは、PaPeRoが研究段階の試作機であるため、インテルCPUやWindows 98を利用することで、研究者たちが新たなアーキテクチャーを開発しやすいようにしているという。他のOSへの移行も容易だとしている。

NECは、現段階ではPaPeRoを特定用途の製品として作り込むより、ロボットプラットフォームとして手軽にいろいろな試作ができるようにしており、将来製品化する際は、そのロボットにどういった用途や機能を持たせるかによって、パソコンベースの構成か、組み込み用CPUと専用OSの構成かどうかが変わってくるだろうとしている。いずれにせよ、何らかのCPUとOSを用いて、それにNEC独自のロボットプラットフォームと認識技術を搭載する形となる見込みだ。

PaPeRoの本体サイズについては、家庭の床を動くことを考慮し、重量をさらに軽量化したいとしている。一方、独特のデザインについては、人とやりとりすることに注力しているため、他社の2足歩行ロボットなどのようにメカとして深追いするのは控え、最低限必要な機能を搭載し、モーター4つでどこまでできるかを追求しているという。

PaPeRoは現在、実証実験段階であるため、製品化時期は未定。NECは今後、家庭にPaPeRoを利用実験してもらい、認識性能や動作/行動などの技術検証と、人とロボットが暮らすことでどういう関係が生まれるかという人とロボットの関わり合いという2つの側面について研究を進めるという。また、技術的な課題として、音声認識や対話性能の向上化を図るほか、研究者がPaPeRoを利用して新たな認識モジュールなどを開発/追加できるようにロボットプラットフォームとしてのさらなる整備を行なうという。

大学や企業との共同研究/開発も推進し、技術系大学とは認識性能や自律移動技術などの研究を、人文系大学とは人とロボットの関係やロボットの認知、人への心理的影響などの研究を行ないたいとしている。他企業とは、実験的に新たなアプリケーションの共同開発を進めるという。

天満氏と藤田氏
発表会で説明を行なったNECインキュベーションセンター長の天満勉氏(左)と藤田氏(右)

(編集部 桑本美鈴)


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