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ニュース / キーパーソン 月刊アスキー 2001年3月号

XBOXの日本戦略

XboxはいかにしてPS2やGAMECUBEと戦うのか!?


2001年4月4日

Introduction

大浦氏写真
情報が徐々に広がりつつあるものの、いまだ実態を知られざるXbox。果たしてマイクロソフトはXboxをどうやって日本に投入し、いかに強力なライバルたちと戦っていくのか。マイクロソフトでXbox事業を統括する常務取締役・大浦博久氏に、Xboxの戦略について聞いた。



(月刊アスキー 編集部 小西・大槻)


米国と日本ではタイトルのラインナップを変える

[アスキー編集部] Xboxの発売スケジュールは決まったのでしょうか。

[大浦] 内部ではおおよそ決まっています。具体的な日付はまだ言えませんが、2001年秋から遅くても今年中に日米で発売の予定です。ヨーロッパは2002年の第1四半期を予定しています。

[アスキー編集部] XGPUの開発が遅れていて、最初に発売されるXboxには本来のXGPUは搭載できない、という話も聞こえてきますが。

[大浦] いやそれはないと思います。確かに開発は若干遅れていますが、今さらスペックを落とすほうが大変ですので、製品化を遅らせるほどの遅れではありません。

[アスキー編集部] PS2は日本と米国でハードウェアそのものの仕様が違います。Xboxではそのような違いはあり得るのでしょうか。

[大浦] サードパーティーがいかにワールドワイドで製品を提供できるかを考えているので、本体に関しては変えるつもりはありません。

[アスキー編集部] 何社くらいが本体発売時に名乗りを上げ、どれくらいのタイトル数がそろいそうですか。

[大浦] 「Xboxでソフトを作る」と参入表明されているのが、秋の時点で約150社くらい、今は200社くらいかな。そのうち日本では70社以上あります。ただ数で勝負ではなく、いいものが出てこないと困ります。発売のタイミングでそろうものはあまり数を増やしすぎず、Xboxのフィーチャー、たとえばグラフィックやHDDを生かしたものに絞っていきます。

[アスキー編集部] Xboxの発売直後に並ぶタイトルは、米国と日本では違うと聞いていますが。

[大浦] ぜんぜん違うものをそろえます。口がすっぱくなるほど米国のスタッフに言っているのですが、「米国で売れたゲームでも、そのまま日本に持ってきて売れるゲームは何もない」と。たとえばマイクロソフトはWordのローカライズの際に、単に言語を変えるだけでなく機能面まで日本向けの変更を行ないました。それと同じくらいのことをしない限り、米国のタイトルを日本には持ってこさせない。日本でのラインナップは全部日本で決めます。

[アスキー編集部] マイクロソフトはPCゲームでは優れたタイトルをいくつも販売しています。それをXbox向けに移植することはありえますか?

[大浦] 「Flight Simulator」や「Age of Empires」がありますが、これらをそのままXboxに移植して売るというのはしません。コンセプト的に、机を前に椅子に座りPCに向かって遊ぶシミュレーションゲームと、絨毯や畳の上に座ってパッドで操作するゲームは違うだろうと。仮にAge〜をXboxに向けるとしたら……たとえばPS2の「決戦」のようなアレンジを加えるとか、Flight Simulatorも戦闘要素を加えるといったことならあり得るかもしれませんが、PC版をそのまま移植するものは絶対に出てきません。

 Xboxがどれだけ「ゲーム機」であるかの1例がDVD再生機能です。XboxではDVD再生機能を本体には持たせていません。Xboxを買って帰って「Matrix」をドライブに入れても映画は見れない。別売りのリモコンセットを買ってこないと、XboxでDVDは見れないのです。ゲームをしたい人はXboxだけ買えばいい。もしXboxでDVDを見たいというなら、お金を払ってオプションを買わないと見れない。わざわざそうしたほどXboxはゲーム機に位置づけられているのです。

(月刊アスキー 編集部 小西・大槻)


エルゴノミクスに基づいたパッド

[アスキー編集部] 筐体のデザインが公開されましたが、あれについての反応はいかがですか。

[大浦] 真っ二つに分かれていますね。「大きい」というのは共通した意見なのですが(笑)、「デザイン的に格好悪い」という意見と、「これだけの機能が入っていればサイズやデザインは関係ない」という意見です。工業デザインの分野でソニーに勝てるとは思っていないしね。HDDが入りEthernetやいろいろなチップが入り、放熱ファンまで入っていると本体のサイズは仕方がない。

 でもゲームパッドだけは日本仕様に変えます。ユーザーへの顔となるのは、本体じゃなくパッドなんです。いかに使いやすく疲れない、カッコイイものにできるかが一番重要だと考えています。米国のパッドも大きいですが、子供が持っても使いやすく慣れれば慣れるほど楽に使えるよう、徹底して体の動きを考えて作ったものです。人間工学を計算したデザインという意味では、「Natural Keyboard」と同じですね。ただパッと見が「でかいな!」という印象があるので(笑)、日本人の手の大きさに合わせます。機能は変えません。

(月刊アスキー 編集部 小西・大槻)


デベロッパをいかに支援するのか

[アスキー編集部] 日本のデベロッパではWindows PC用にゲームを作られているところは少ない。PC分野でのノウハウのなさが開発に影響する部分は大きいのでしょうか。

[大浦] Direct Xのツール群にいかにして慣れるかというレベルの問題なので,PCの経験はあまり関係ないのではないでしょうか。

 たとえば他のゲーム機と比べて,ハードの能力を100%使いこなすレベルまで到達するのはXboxのほうが早く簡単にできるという自信があります。ただし150%まで行くための仕事のつらさは,他のゲーム機で100へ行くのと変わらないでしょう。だから今までより格段に良いものが簡単に作れるかというと,そんなことはないでしょうね。

 日本がゲーム業界に優れたクリエイターが集まっている最大の理由は,クリエイティブな仕事を目指す人にとって映画業界がビジネスとして成り立っていないからではないでしょうか。アメリカでは優れたクリエイターがハリウッドの映画産業に流れるところを,日本ではゲーム業界に流れてくる。そういったクリエイターたちがXboxで初めてHDDが入ったことによって,映画に近い世界も作れるようになってくるのではないか,と考えています。

[アスキー編集部] それはどういった意味でしょうか。

[大浦] たとえばこの応接室にキャラクターが入ってきて格闘になる。テーブルはひっくり返りコップのジュースもこぼれる。映画なら別のところに行ってから再び部屋に戻ってくると,ジュースはこぼれたままになっていますよね。でも今のゲームではきれいに片づけられて以前の状態に戻ってしまう。些末なデータの変化まで保存しておけない。だがXboxならそれができる。本当の意味で細かい部分までも突き詰めていけるゲーム機になれると思っています。

(月刊アスキー 編集部 小西・大槻)


Xbox=ネットワークゲーム だけではない

[アスキー編集部] ネットワークゲームは今までの売り切り型のゲームよりも大きな投資がデベロッパ側に必要となり、リスクが増大するためチャレンジしにくい面もあります。それに対してマイクロソフトがなんらかの形で支援を行なうことはありますか。

[大浦] インキュベータプログラム(「XBOX開発システムの秘密に迫る」参照)という開発者支援のプログラムがありますが、これのオンラインに特化したプログラムというのが、そのうち登場するかもしれませんね。

 ただ今の段階では、僕らは積極的に「Xboxでオンラインゲームを作ってくれ」という話はしていません。スタンドアロンで面白いものが、ネットになってより面白くなる。基本はネットにつながなくても面白いゲームなんです。

[アスキー編集部] しかしXbox自身にはEthernetインターフェイスはありますが、モデムもTAもない。インターネットにつなぐための手段はどうやって提供されますか。周辺機器としてモデムやTAをそろえるのか、またはゲームに付属させたりISPと組んで提供という形になるのか。

[大浦] まずアメリカとヨーロッパでは、ブロードバンドインターネットが遠からず来るだろうという読みの元、アナログモデムはあえて無視します。サードパーティーがアナログモデムを必要とする企画を持ち込んでも却下しています。Ethernetを使ってくれと。

 日本で最終的にどうするかはまだ決まっていないのですが、今のままでいくとブロードバンド接続のみにしようかと考えています。半年前ならアナログモデムをばらまかないといけなかったかもしれませんが、今はDSLなどの高速回線が思った以上に早く立ち上がりそうです。Xboxが出て1年以内には、ある程度の数の家庭にDSLや高速インターネット接続が普及しているでしょう。我々もそれを早期に実現できるよう、仕掛けを考えています。

[アスキー編集部] するとXboxが登場した時点では、ネットワークにつながる環境のユーザーはごく限られた割合になりそうですね。高速ネットワーク環境が普及しないとXboxでのネットワークゲームは立ち上げようがなくなる。デベロッパ側としてはやりにくいのではないですか。

[大浦] 決定ではないですけどね。でもヘタに過去の亡霊を引きずるよりは、しばらく我慢してでもブロードバンドに直接進んだほうがいいのかな、というのが今の気持ちです。

(月刊アスキー 編集部 小西・大槻)


Xboxでリビングに絶対に入り込む

[アスキー編集部] 先ほど子供ではなく若者、ヤングアダルト層をまずターゲットとすると言われましたが、PSでクローズアップされたいわゆる「ライトユーザー」は、今ゲームから離れていってしまっています。彼らの目をXboxに向けさせることは可能だとお考えですか?

[大浦] どんな製品でも、まずはコアユーザーをその気にさせなくちゃいけないのは、パソコンでもゲーム機でも同じだと思います。コアな人たちに「これは違うぞ!」と、「この環境の中でネットワークゲームが立ち上がったらすごいことになるかも」という期待感を持たせたい。

 しかし今ゲーム業界があまりビジネス的に思わしくないので、その救世主的な存在として「ネットワーク」というものが騒がれすぎていると僕は思っています。本来なら爆発的な影響力を持つネットワークという要素が、あまり早く無理にシフトさせることで「結局こんなことしかできないのか」と思われてしまうんじゃないかと。慎重に準備を整えて新たなゲーム感といったものを作り出さないと、プラスよりマイナスの影響のほうが大きいとさえ思います。

 一方これがうまくいけば、今は灰皿程度の大きさのゲーム市場が灰皿を乗せたテーブルくらい大きく広がるかもしれない。さらに話を広げると、すべての人がネットにつながった世界で何かをするときに遊び感覚、ゲーム的な要素を加えてみる。たとえばショッピングサイトで5000円のものを買うときに、普通に5000円払ってもいいけど、200円払ってゲームをして勝つと4000円で買える。そしてそんなゲームをゲームメーカーだけでなく楽天のような企業でも作れるようになると、ゲームのマーケットはテーブルサイズを超えて部屋のサイズまで広がっていく可能性がある。我々の役割は小さな灰皿の中でSCEや任天堂と戦って灰皿をひっくり返すのではなく、灰皿をテーブルのサイズに、テーブルを部屋のサイズに広げていく。

[アスキー編集部] 今のゲームの市場が灰皿サイズで、ネットワークによってテーブルのサイズに広がる。それがさらに広がった世界ではXboxはゲーム機の枠を超えるものになる。これはXboxがいずれはゲーム機以外のものになることを狙っているということですか。

[大浦] Xboxだけでなく、ゲーム機がスタンドアロンの世界からネットワークにつながったときのゲーム業界がどうなるかという話です。ゲーム業界が部屋のサイズに広がるには、ゲーム業界以外の人たちが「遊び」を個人個人の生活にいかに取り込んでくるかが重要です。

 僕が「部屋」というたとえを出したのは、マイクロソフトの「.NET」戦略の中に「Any where Any device」という言葉があります。今はリビングルームにPCが置かれていない限り、リビングにはマイクロソフトの製品って一切ありませんよね。でもXboxならリビングに広く入り込める可能性が出てくる。またXbox System SoftwareはWindows 2000をベースにしていますので、そのOSを使った他社製のSTBとか電子レンジとか、iモード携帯電話にJavaをリプレースして使われることもあるかもしれない。リビングにあるすべてのデバイスが互いに対話しインターネットにもつながるのが.NET構想です。

 リビングは我々にとって大きな氷の壁に覆われていて、どうしても動かない世界だった。そこにXboxというアイスピックが登場した。このアイスピックで氷に穴を開けて徐々に穴を広げていけば、それ以外への可能性も広がります。Xboxが第1のアイスピックでYが第2、Zが第3といった具合に穴を開け続ける。絶対にうちのOSが入ったデバイスをリビングに送り込む。1度で氷に穴が開かないなら、何度でも刺し続ける。どれほど出血しようともね。

 でもXbox自身がゲーム機である路線は変わりません。それ以外の世界には他のデバイスを使う。ただ他のデバイスにゲーム感覚の遊びを与えて世界を広げるのは、今のゲームメーカー以外の人たち、リクルートや楽天、あるいはMSNなのかもしれない。今まではゲーム、遊びの世界に入れなかった会社が入り込まなくちゃいけない世界がこれから出てくるんじゃないかと思うのです。Xboxはゲーム機です。これはビル・ゲイツも変えるつもりはない。まあZboxくらいになったら、いろんなものにつながるかもしれないけどね(笑)。

大浦氏写真


(月刊アスキー 編集部 小西・大槻)




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