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「日本ではオンデマンド・プリンティングの利点が理解されていない」――ペスコ氏に聞く


2001年4月5日

5〜7日の3日間、オンデマンド・プリンティングにフォーカスした国内唯一のビジネスイベントである“ON DEMAND Printing JAPAN 2001”(オンデマンドショー2001)が東京・西新宿のセンチュリーハイアット東京と新宿NSホールの2会場で開催されている。

オンデマンドショー2001は、印刷業界において著名なコンサルティング会社である米国CAPベンチャーズ社が'94年から開催しているものと提携して、開催されているもの。同コンファレンスのキーノート・スピーカーとして来日した米CAP Ventures社のマネージング・ディレクター、チャールズ・ペスコ(Charles A.Pesko,Jr.)氏にインタビューした。

チャールズ・ペスコ氏
CAP Ventures社のマネージング・ディレクター、チャールズ・ペスコ氏

オンデマンド・プリンティングは、デジタルデータを製版工程を経ずに直接印刷するもので、従来のオフセット印刷と比較してショートラン(短納期)、小ロットの印刷が可能な技術として注目を集めている。さまざまな応用が考えられる技術であることから、印刷、広告関連はもちろん、印刷を利用する側の一般企業からも注目されている。また、書籍流通の革命ともいえるブック・オンデマンドの中核技術としても期待が集まっている。

ペスコ氏には米国でのオンデマンド・プリンティングを使ったビジネス・トレンドとインターネットとの連動の可能性について伺った。なお、通訳と日本市場の事情についてのフォロワーとして、CAP Venturesの日本側パートナーであるG.S.M.(株)代表取締役の吉田一博氏に同席いただいた。

“バリアブル・プリンティング”に注目

[ASCII24] オンデマンド・プリンティングは、企業のコスト削減策としてショートラン、小ロットに有利な印刷技術の部分が注目されてきましたが、米国ではほかにどのような点が注目されていますか?

[ペスコ氏] オンデマンド・プリンティングは、ショートラン、小ロットの印刷技術として、企業内マニュアル類などの印刷に用いられていますが、最近では1部ごとに内容を変えて印刷を行なうことができる、いわゆる“バリアブル・プリント”を使った事例が数多く出てきています。

中でもダイレクトメールに活用した事例が本当にいっぱいあります。同じ内容の文書を顧客に対して送るこれまでのダイレクトメールの手法の場合、ビジネスとしてレスポンスがあったのはほんの2〜3%でしたが、顧客ごとにカスタマイズした内容の文書を送るバリアブル・プリントを使ったダイレクトメールの場合、20〜30%のレスポンスがあることがわれわれの調査でわかっています。バリアブル・プリントの場合、どうしてもコストが高くついてしまいますが、その効果はコストをカバーしてあまりあります。

たとえば、自動車販売の分野でホンダの例を挙げますと、ディーラーとしては、その顧客に対して一生自社のクルマを売り続けたいと考えているわけです。その間、車検やオイル交換の時期などさまざまな顧客データが蓄積され、データベースとなります。それらを活用してカスタマイズし、バリアブル・プリンティングで顧客に情報を提供するわけですね。

[ASCII24] カスタマー・マーケティングの分野では、ダイレクトメールに変わるものとしてウェブやEメールを使ったマーケティングが注目されていますが、どちらがより効果的だとお考えですか? また、比較した場合、オンデマンド・プリンティングのアドバンテージはどのあたりありますか?

[ペスコ氏] まず、どちらかがよいということではないと思います。相互補完しあうものだと考えています。ウェブだけではなく、同じコンテンツを同時に出すことで相乗効果が得られると思います。

[ASCII24] とすると、バリアブル・プリンティングで作成されたダイレクトメールだけを送るより、インターネットを絡めた方がより効果が上がるということでしょうか?

[ペスコ氏] 必ずしもそうとは言えません。Eメールにはスパムメールなどの悪いイメージがついており、宣伝メッセージをEメールで送るのは逆効果だと考えられています。顧客が興味を持てるカスタマイズされたダイレクトメールを送り、そこからウェブにアクセスしてもらうのが効果的だと思います。

出版界に与えた2つの革命的インパクト

[ASCII24] アドビシステムズ社やマイクロソフト社の“eBook”ソリューションや、バーンズ&ノーブル社などのオンラインブックストアーなど、電子書籍、ネットワーク・パブリッシングが進展しつつあります。今後、それらの電子書籍ファイルを印刷するものとして、オンデマンド・プリンティングが用いられていくのでしょうか?

チャールズ・ペスコ氏
チャールズ・ペスコ氏「ブック・オンデマンドは出版界に2つの革命的なインパクトを与えています」

[ペスコ氏] ブック・オンデマンドは出版界に2つの革命的なインパクトを与えています。

1stBooks.comをはじめとする15社のオンライン・パブリッシャーは、どの書籍データでも100ドル(約1万2400円)で購入できるサービスをはじめています。アメリカにおいては、本の保管コストや輸送コストに35〜40%もかかってしまいます。ブック・オンデマンドは本の流通を変え、本を売るプロセスが変わる可能性があります。これが1点めです。

さらにもうひとつは書店です。書店にオンデマンド印刷機を設置し、顧客はオンライン上に数億とある書籍コンテンツから必要なものを検索して選択し、その場で印刷・フィニッシングを行ない購入する、というものです。これはまだ計画の段階ですが、名前を聞けば誰でも知っているような有名な書店が計画を進めています。

[ASCII24] その場合の著作権の問題はどのようになっているのでしょうか?

[ペスコ氏] 扱っている本は絶版書籍がほとんどなので、プロテクトやコピーガードをかけています。書店は版元からライセンスを委託されて販売を行なうことになります。このほかにブック・オンデマンドの事例では、大学に興味深い事例があります。大学の教授は、自分のカリキュラムに必要なデータをピックアップして、印刷してフィニッシングして、カスタマイズした教科書を供給しています。

[吉田氏] 今回、オンデマンドショーで発表になる第2回オンデマンドアワードの受賞社に(株)ブッキングがあります。こちらはウェブサイトで100人以上のリクエストが集まった時点で絶版書籍を復刊させるというユニークなブックオンデマンドのビジネスモデルで黒字化に成功しています。

吉田一博氏
G.S.M.(株)代表取締役の吉田一博氏

[ASCII24] オンデマンド・プリンティングの日本市場における可能性と展望をお聞かせください。

[ペスコ氏] 日本市場は欧米に比べて、まだまだオンデマンド・プリンティングが浸透しておりません。我々の調べでは、オンデマンド・プリンティングの印刷業における割合は、北米では6.2%、西欧では8.2%と健闘していますが、日本では0.3%と1%にも至っておりません。今後の成長率としては、北米が20%、西欧が21%伸びると予測されており、日本では50%の成長が見込まれています。

オンデマンド・プリティングの普及には、新しい技術ではなく、ビジネスモデルを作り出すことが重要です。まだまだ、オンデマンド・プリンティングの利点が理解されていない。我々にはそれを啓蒙する必要があると考えています。

(千葉英寿)


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