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【詳報】米Transmeta、“Smart Processor”Crusoe発表――Web Pad用に『Mobile Linux』も提供


2000年1月20日

米Transmeta社は19日(現地時間)、カリフォルニア州サラトガにおいて記者発表を行ない、低消費電力のx86互換モバイル用プロセッサー“Crusoe”(クルーソー)について詳細を明らかにした。

Transmetaは'95年に設立され、本社は米カリフォルニア州サンタクララに置いている。世界に200名の社員がおり、日本と台湾に事務所を持つ。設立後はほとんど外に情報を出すことなく製品開発を行なってきた。Crusoeプロセッサーは同社初の製品となる。

同社のリリースによれば「Crusoeは世界初の“Smart Microprocessor”で、その画期的なソフトウェアの手法は、モバイルコンピューティング分野に革命をもたらす」という。Crusoeは1つの製品の名前ではなく、小型携帯端末からサブノートパソコンまでをカバーするプロセッサーファミリーのブランド名である。Crusoeプロセッサーファミリーはいずれもx86互換プロセッサーとして動作し、プロセッサー内に一部チップセット(ノースブリッジ:メモリーコントローラーやPCIバスコントローラー)も内蔵している。

同社によると、Smart Processorはアプリケーションが動作している間にそのアプリケーションについて“学習”し、その結果をプロセッサー自身が(アプリケーションに対して)よりうまく振る舞えるように利用するというもの。これにより、パフォーマンスの改善と、低消費電力化が両立できるという。

Code Morphing
Transmetaで開発にあたったLinuxの生みの親である、ライナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏は、昨年のCOMDEX/FALLの基調講演の中で、「ソフトウェアと一緒に作られた初めてのCPUだ」と語った。これはCrusoeが“Code Morphing Software”アーキテクチャーと呼ばれる技術を採用しているためだ。



Crusoeのプロセッサーコアは128bitのVLIW(Very Long Instruction Word)アーキテクチャーを採用する。VLIWは複数の命令をまとめた1つの命令語を、同時に実行するというプロセッサーの命令処理方式。VLIWプロセッサーで実行される命令語は“Molecule(分子)”と呼ばれ、Moleculeは2ないし4個の“Atom(原子)”と呼ばれる命令を含んでいる。Crusoeプロセッサーでは、64bit長または128bit長のMoleculeを実行可能。Pentium II/IIIが採用しているスーパースケーラに比べ、トランジスター数を抑え、ハードウェアを簡素化できるという特徴を持つ。

VLIWアーキテクチャーのプロセッサーは、そのままではx86プロセッサー用命令を実行できない。x86命令をCrusoeのVLIW命令に翻訳するのが、ROMに格納されているCode Morphing Softwareである。実行時のパフォーマンス向上のため、プロセッサーの初期化の際にCode Morphing SoftwareはDRAMにコピーされる仕組みとなっている。

単純に命令を1つずつ翻訳して実行するのでは、VLIWプロセッサーの処理効率が悪くなるため、VLIWプロセッサーが処理しやすい形で最適化しながらの翻訳が必要となる。よりスムーズに翻訳が行なえるよう、浮動小数点型の値はx86プロセッサーと同じ80bit長で処理できるような工夫が行なわれている。これらの点が、同社がCrusoeをSmart Processorと呼ぶ理由だろう。

Crusoeプロセッサーでは、VLIWプロセッサーコアとCode Morphing Softwareの組み合わせることで、同程度のパフォーマンスを持つx86互換プロセッサーと比較して、ロジック回路に使用されるトランジスターをおよそ4分の1に抑えることができたとしている。

LongRun
“LongRun”は、Crusoeプロセッサーファミリーに採用されている、パワーマネージメントの技術の名称。LongRunは、インテルのSpeedStepテクノロジと同じように、プロセッサーの駆動電圧と動作周波数をあわせて変更するというものだが、SpeedStepは電圧/周波数のモード(組み合わせ)が高低の2種類しかないのに対して、遙かに多くのモードを備える。

コア電圧(V)   動作周波数(MHz)
1.65 700
1.65 667
1.60 633
1.60 600
1.55 566
1.55 533
1.50 500
1.50 466
1.45 433
1.40 400
1.35 366
1.30 333
1.25 300
1.20 266
1.15 233
1.10 200


Crusoeのコア電圧と動作周波数の関係

SpeedStepのモード変更は、電源がACかバッテリーかという判断によって行なわれる。一方、LongRunでは、動作させているアプリケーションにどのくらいの周波数が必要かを、プロセッサーが判断してモード変更を行なうという。

例えば、CrusoeプロセッサーでDVDのソフトウェアデコードによる連続再生を行なう場合、333MHzないし400MHzが必要だが、この周波数で動かした場合の消費電力は、700MHzの時の25パーセント(333MHz時)または41パーセント(400MHz時)という。また、このときプロセッサーの消費電力は2W以下であり、表面の温度は48度、同じくDVDの再生をPentium IIIで行なったときの105度に比べずっと低い。このため、放熱システムもPentium IIIに比べて少なくて済むという。

このLongRunによる動作周波数の見直しは1秒間に数100回行なわれ、ノートパソコンのバッテリー駆動時間を劇的に改善できるという。これにより3時間以上のDVD再生が可能な、軽量ノートパソコンが実現できるという。

TM3120、TM5400

TM3120(左)とTM5400(右)
TM3120(左)とTM5400(右)



  Mobile Pentium III     TM3120 TM5400
プロセス 0.18μm  0.22μm 0.18μm
1次キャッシュ(命令/データ)   16KB/16KB 64KB/32KB 64KB/64KB
オンダイ2次キャッシュ 256KB 256KB
ダイサイズ    106mm2 77mm2 73mm2
サポートするメモリー   − SDRAM(66〜133MHz) SDRAM(66〜133MHz)、DDR SDRAM(100〜133MHz)
パッケージ BGA、mPGA BGA   BGA


Mobile Pentium IIIとCrusoeの比較

注:Crusoeの1次キャッシュは命令、データともに8-wayセットアソシエイティブキャッシュ

※Crusoeプロセッサーの価格は【速報】を参照

Transmetaのデヴィッド・ディッツェル(David Ditzel)CEOは説明会で、この2つのCrusoeプロセッサーについて、TM3120とTM5400はまったく異なる内部デザインとなっており、TM5400はWindowsを動作させる軽量ノートパソコン向け、TM3120はモバイルインターネット端末向けを想定したものだと述べた。TM3120については、同社からフラッシュメモリーのみでHDDを持たないシステム向けの『Mobile Linux』を供給することも明らかにされた。また、Crusoeチップの製造は米IBM社に委託するという。

ディッツェルCEO
ディッツェルCEO



Windowsパソコン向けのTM5400の出荷は今年半ばとされているが、動作周波数が700MHzと高く、かつ消費電力がMobile Pentium IIIなどよりずっと少ないことを考えると、サブノートクラスのパソコンでCrusoeを採用するメーカーも案外早く登場するかも知れない。技術説明会ということで、パソコンメーカーの名前は登場しなかったが、日本や台湾に技術スタッフを置くということからも、メーカーからなんらかのアプローチがなされているものと推測される。

(編集部 佐々木千之)


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