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改正住民基本台帳法による個人データ流出の可能性について、市民団体が学習会を開催


1999年9月21日

9月15日、“ネットワーカーのための住基法学習会”が東京都新宿区の早稲田奉仕園の会議室で開催された。主催は、市民団体の“ネットワーク反監視プロジェクト”。8月の通常国会で成立した改正住民基本台帳法(住基法・国民総背番号法)に関して、自治体間のコンピューターネットワーク化における問題点などについて話し合った。学習会では、『プライバシークライシス』(文春新書)の著者の斎藤貴男氏および、市民団体“番号管理はいやだ!市民行動”の宮崎俊郎氏が報告した。

司会の小倉利丸氏(ネットワーク反監視プロジェクト)
司会の小倉利丸氏(ネットワーク反監視プロジェクト)



2002年までに施行される改正住民基本台帳法は、国民1人1人に10桁の住民票コードをつけ、その番号をもとに、国や自治体が本人確認や事務処理をするというものだ。各市町村・都道府県と全国センターをネットワーク化、センター側で、住民票コードおよび住所、氏名、性別、生年月日の4つの情報を管理し、希望者には、ICカード化された住民基本台帳カードを貸与する。ICカードの提示により、全国どこの自治体窓口でも住民票が取得できるほか、転入転出届が、転入時の1回で済むようになる。このデータを利用できる国の機関は、16省庁・92事務に限定され、また民間利用はしないとされている。

主催団体や講師らは、プライバシー保護などの観点から、一貫して通信傍受法(盗聴法)や改正住民基本台帳法を疑問視する立場をとっている。斉藤氏および宮崎氏は、改正住民基本台帳法について、個人情報が民間に流出する可能性や、個人情報が国家によって一元管理される危険性について説明した。

ICカードの認証にバイオメトリクスが用いられる可能性
斉藤氏は、ICカードは、建設現場の労務管理など、一部の機関ですでに導入が進められていると説明した。そして、このICカードを住民基本台帳カードとして利用する場合、紛失や盗難に対する措置が必要になることを指摘した。

ジャーナリストの斎藤貴男氏
ジャーナリストの斎藤貴男氏



「本人であることを確認するために、指紋や虹彩、網膜、声、手の形、耳の形といったバイオメトリクスが用いられることになるだろう。大企業の一部では入退室管理などにこの技術が用いられており、技術開発もかなり進んでいる。ICカードには指紋を登録することになるだろう。つまり、国家は個人の指紋情報を管理することになるわけだ。通産省のある外郭団体では、実際にICカードと指紋読み取りの連動システムの開発を進めている」。

4つの情報よりも多くの情報がやり取りされることになる
宮崎氏は、「背番号制は、重大な問題をはらんでいながら、盗聴法に比べて、マスコミで取り上げられる頻度が圧倒的に少なかった。なぜか。それは、背番号が付されることの危険性が、実感として認識できないからだ。盗聴法は、電話や電子メールが権力によって盗聴されるという危険性が実感できたので、反対運動が形成できた」という。「背番号制は、法案レベルでは個人情報は民間に流出しないとしているが、実際のところ、情報処理機関は、国ではなく外郭団体に任されるなど、まったくのザル法。

宮崎俊郎氏(番号管理はいやだ!市民行動)
宮崎俊郎氏(番号管理はいやだ!市民行動)



また、10桁の番号は、納税者番号制度にも使うという話がある。これは突き詰めて考えると、喫茶店でお茶を飲む、本を買うといった、ありとあらゆる金銭取引にICカードの提示が必要ということになる。かつ、ICカードに、図書館や保健所の利用など、各自治体の判断で公共サービスを入れ込むこともできる」として、住民基本台帳以外に用途が拡大し、個人のあらゆる情報がICカードに蓄積される可能性を示した。

住基法の何が問題なのか、イメージの明確化が大切
両氏の講演の後は、参加者も交えたフリーディスカッションが行なわれた。約2時間に及ぶ議論の中で、次の事柄が話題になった。

「そもそも10桁の番号で全員に重複なく番号が振れるのか」、「名前と住所の2つの情報さえあれば、個人の特定が可能なので、10桁の番号をわざわざ振る必要はないはずだ。番号を付けるのは、住民票として個人を特定すること以外に、理由があるのではないか」

ネットワークの図を書きながら、データの流れがどうなっているのか議論
ネットワークの図を書きながら、データの流れがどうなっているのか議論



「自治体間のネットワークは具体的にはどのように構築されるのか。そのセキュリティーはどうなっているのか。セキュリティーが確保されても、その端末を操作するのは人間なので、100パーセントのセキュリティー確保はありえないのでは?」、「国会ではコンピューターに詳しい議員が少ないため、議論が抽象的になりすぎる」

「個人情報を“一元的に管理しない”ということになっていても、犯罪の捜査目的という理由などで、個人の社会的背景やプライバシーなどが検索・一覧されることになるのではないか」、「アメリカから非関税障壁という圧力により、ICカードの情報はダイレクトマーケティングに用いられることになっていくだろう」−−。

改正住民基本台帳法をプライバシー保護の観点で語ると、「4情報ぐらいなら問題ないだろう」と軽視されがちになるなど、同法の問題点は、一般的にはなかなか見えづらい。車両を識別するNシステムや、高速道路の自動料金収受システムなどが、裏を返せば無差別に市民の行動を監視するシステムであるのと同様に、改正住民基本台帳法がきっかけで電子化された個人データが、当人の知らないところで国家や第三者に利用される可能性がある。このような危険性について、よりイメージしやすい形で情報発信していくことが重要である、と会は締めくくられた。

(若菜麻里)


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