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【電総研 創立110周年記念講演会 後編】元所長らが歴史的エピソードを披露


2000年11月3日

1日に行なわれた、電子技術総合研究所(電総研)が主催する特別記念講演会“情報・エネルギー・エレクトロニクス・計測標準技術の過去・現在・未来”。後編では午後に行なわれた電総研OBによる特別講演と現スタッフを交えてのパネルディスカッションの模様をお伝えする。

午後からの記念講演は名称変更と移転時の所長を務めた森氏らが務めた

まず“電気試験所から電子総合技術研究所へ”のテーマで三菱電機社友の森英夫氏が講演した。同氏は研究所の名称が変わり、場所がつくば研究学園都市へ移転した当時の所長を務めており、当時のエピソードなどを紹介した。それによると名称変更は長く課題ではあったが「日本の機構改革は遅れるのが常であり」、同時に管轄省庁との摩擦などもあって、電気試験所としての試験・検定業務の移管や電子情報技術の研究へのシフトが遅れたと話した。また名称についても主な業務を「電子技術を応用した情報処理技術を含む」としたために、ハードウェア分野が優先されてしまい、その結果現在のIT革命に乗り遅れたのではないかとも指摘した。

所長を経験した森氏は、当事者ならではのエピソードを披露した

そして電総研の歴史のキーマンとして、電子部長の立場で電子技術研究を推進した和田弘氏に触れ、同氏の功績について紹介。'50年代のコンピューター開発、情報処理学会の設立にあたっての記念講演の内容、海外留学におけるエレクトロニクス技術の将来に対しての洞察力などについて話した。また、森氏は所長時代のマネジメントや戦略の策定、契約研究制度、生物研究の導入などにも触れ、当時、電気や電子分野で有名な英国のキャベンディッシュ研究所にDNAのらせん構造でノーベル賞を受けたワトソンらがいたことに注目、'71年の採用で「物理の博士として生物をやることを条件」に前出(【電総研 創立110周年記念講演会 前編】)の松本元氏を採用したエピソードを明かした。「こんなに立派になるとは想像もしなかった」とも話した。

森氏はいわゆる“日本の国力40周年説”(日本の国力が40年周期で変動するという説。それによると今はバブル経済後の下降期)に電総研の歴史を当てはめて将来の奮闘を促した

最後に今後の電総研への注文として、歴史から学ぶこと、ベストプラクティスを学ぶこと、省庁の壁を超えての活躍などを託して講演を締めくくった。

トランジスター開発の黎明期を目の当たりにした菊池氏。その後ソニーへ移った

もう1つの特別講演は東海大学の名誉客員教授の菊池誠氏が“トランジスタ黎明期の電子基礎研究と21世紀への期待”をテーマに行なった。同氏は'48年に電気試験所に入所し、トランジスターの開発を目の当たりにしてきており、当時のエピソードを紹介した。その中でキーパーソンとして鳩山道夫氏と和田弘氏の2人を挙げ、その業績を称えた。もともと米国でベル研究所がトランジスターを開発したというニュースがGHQ絡みの非公式なルートで伝わったこと、その追試を行なうにあたってゲルマニウム結晶が手に入らないため、粗悪なシリコンで行なったものの何の結果も出なかったこと、主だった研究者が集まって議論を交わした“トランジスタ会議”、そして'50年当時でトランジスターの原理についてまだ誰も完全な理解ができていなかったことなどのエピソードを披露した。また、その後本物のトランジスターを入手して試験を行なったこと、菊池氏が手術中に思いついた手法が米国で国際論文として採用され「技術全般が遅れていても基礎的な物性の解明で世界に通用する仕事ができる」と感じたことにも触れた。

トランジスターの発明を伝える英文レターを紹介する菊池氏

そして和田氏が設置した電子部を作るための準備室への異動をジャンケンで決めたこと、その電子部では最初の1年で「動作するトランジスタを自前で作りあげよ」と命令され、それを実行してみせたことも紹介、トランジスター黎明期の様子をユーモアを交えて話した。最後に電総研へのメッセージとして“新しいキーコンセプト”を送り、成熟を深めることと次世代への関心を持つことという相反する考えを持つことが大事とも語った。

講演の最後には現スタッフによるパネルディスカッションも開催された

最後のパネルディスカッションでは、来年からの新体制を担う現スタッフが登壇、それぞれの分野における研究分野が紹介された。また今後の取り組みについて、ノーベル賞の受賞者数やオリンピックでのメダル数が少ないことを引用されてその関連性なども討論された。講演を行なったOBからマーケティングや技術活用についての広い視野を求める意見や、研究所統合によって組織が大きくなりすぎたことへの不安などの意見が出た。

パネルディスカッションでは新しい研究体制に対する不安なども質問された

(浅野純也)


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