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NHK技研、“技研公開2006”を開催――4kスーパーハイビジョンに関する技術展示に注目!


2006年5月25日
恒例の公開イベントが始まったNHK放送技術研究所
恒例の公開イベントが始まったNHK放送技術研究所

日本放送協会(NHK)の研究組織であるNHK放送技術研究所(技研)は25日から、技研で研究開発されている技術を一般公開するイベント、“技研公開2006”を、東京世田谷区の技研にて開催した。画素数7680×4320の超高解像度映像“スーパーハイビジョン”に関する展示が多数行なわれるなど、注目を集めている。技研公開2006は28日まで開催される予定。

技研公開は毎年行なわれている公開イベントで、技研で研究開発されている技術を広く一般公開するイベントである。将来の放送技術やサービス、一般の目には触れにくい撮影に関わる技術などが見られる、興味深いイベントである。25日は平日にも関わらず、非常に多くの見学者が訪れて、熱心に展示に見入ったり、説明員に質問する光景が見られた。

放送の送信技術から、家庭でのサービス利用など幅広い研究が公開されるイベントであるが、今回力を入れた展示が行なわれていたのが、技研が“スーパーハイビジョン”と称する超高解像度の映像システムである。画素数は水平7680×垂直4320画素で、現在のデジタル放送で使われる“1080i”の1920×1080画素と比べると、実に16倍もの解像度になる。音響に関しても、22.2チャンネルというマルチチャンネル3次元音響システムを用いる。2005年に開催された愛知万博では、スーパーハイビジョン映像の展示が行なわれて、その評判となった。

これが超高解像度の映像を撮影する“スーパーハイビジョンカメラ”
これが超高解像度の映像を撮影する“スーパーハイビジョンカメラ”

スーパーハイビジョンに関する展示は、撮影用カメラから撮影した無圧縮映像の光伝送システム、さらに衛星放送で利用するための映像符号化/復号化技術と衛星放送システムなど、撮影から放送までのさまざまな技術の展示が行なわれた。また特設シアターでは技研の入口に設置されたスーパーハイビジョンカメラからのライブ映像や、米国で開催された放送技術に関する展示会“NAB 2006”で披露された映像の公開も行なわれた。シアターでの映像は、映画館並みの巨大なスクリーンにプロジェクターで投影表示を行なうものだったが、ニューヨークの街の風景が映画以上の高精細な映像で映し出されると、見学者から「ほう」といった感心の声が挙がった。



技研の入口に設置されていたスーパーハイビジョンカメラ。入口を撮影して、会場内やシアターでライブ映像を披露した
技研の入口に設置されていたスーパーハイビジョンカメラ。入口を撮影して、会場内やシアターでライブ映像を披露した
スーパーハイビジョンカメラの撮像素子や表示装置の解説図。撮像素子の画素数が足らない分を、画素ずらしを行なってカバーしている
スーパーハイビジョンカメラの撮像素子や表示装置の解説図。撮像素子の画素数が足らない分を、画素ずらしを行なってカバーしている

スーパーハイビジョンの画素数は約3300万画素もあるが、現在の撮像素子ではこれほどの高解像度を実用的なカメラに収まるように実現するのは困難だ。そこでスーパーハイビジョンカメラでは、3840×2160画素(約830万画素)のCMOS撮像素子を使い、RGBのうちGを斜めにずらして2画素分撮影して合成するという手法をとっているという。また撮影された無圧縮の映像は、60フレーム/秒で約24Gbpsというデータ転送速度になるため、HDDを束ねて3.5TBの容量を実現したストレージ(収録再生装置)でも、約18分程度しか記録できない。展示では撮影した非圧縮映像を光ファイバーで伝送する技術研究の展示も行なわれていた。通常のハイビジョン放送用のシリアルインターフェース“HD-SDI”(約1.485Gbps)を16本分束ねて、1本の光ファイバーで伝送するための高密度な波長多重方式を用いた光伝送システムも開発されている。2005年11月2日には、千葉県鴨川市の鴨川シーワールドから東京都世田谷の技研までの約260kmを結んでの、生中継の伝送実験にも成功しているという。

無圧縮のスーパーハイビジョン映像を1本の光ファイバーで伝送した実験の説明図
無圧縮のスーパーハイビジョン映像を1本の光ファイバーで伝送した実験の説明図
スーパーハイビジョン放送の家庭向けレコーダーシステムの実験装置。1.2TB分のHDDを備えるが、それでも最高品質の600Mbpsは4.5時間しか記録できない!
スーパーハイビジョン放送の家庭向けレコーダーシステムの実験装置。1.2TB分のHDDを備えるが、それでも最高品質の600Mbpsは4.5時間しか記録できない!

スーパーハイビジョン並みの映像は、デジタルシネマなど上映設備を限定した環境での利用が期待されているが、技研ではスーパーハイビジョンを家庭でも楽しめるように、“スーパーハイビジョン放送”実現の技術研究も行なわれている。その鍵となるのが、映像を圧縮する符号化技術と、放送衛星を使って送信する“21GHz衛星方法システム”である。符号化では24Gbpsもあるスーパーハイビジョン映像信号を、MPEG-2ベースの符号化技術(MPEG-2 Main Profile)の180〜600Mbpsに圧縮する。22.2チャンネル音声信号は、非圧縮伝送(28Mbps)か、Dolby-Eコーデックにより約4分の1の7Mbpsに圧縮伝送される。また中継用の衛星放送システムでは、21GHzという高周波数帯の使用を検討している。しかしこの周波数帯は雨による減衰が大きいため、地上の降雨量を予測して雨が降りそうな地域には電波を強くするといった、“降雨減衰補償技術”の研究も行なわれているそうだ。もちろんスーパーハイビジョンを本来の品質で楽しむには、それを表示するディスプレー側も高精細になる必要がある。しかし現在のフルHD対応TVの16倍もの画素数が必要となるので、ディスプレー側の進化も求められる。シアター横に貼られていたスーパーハイビジョンのロードマップでは、2025年に放送開始という見通しが示されていた。はたして実現はなるか!?



スーパーハイビジョンの研究ロードマップ。2025年の放送開始を目指しているというが……
スーパーハイビジョンの研究ロードマップ。2025年の放送開始を目指しているというが……

そのほかの研究展示

会場入口近くでは、既存のデジタル放送をベースとして、さまざまなコンテンツ配信やネットワークの活用を研究する展示が行なわれていた。家庭にHDD搭載のホームサーバーを設置して、蓄積された放送を各部屋に配信したり携帯端末に転送するといった展示は、2007年度から予定されているサーバー型放送サービスによる視聴形態をイメージしたものである。またIPネットワークを使った放送の再送信技術に関する展示では、ユーザーが見たいチャンネルだけをIPマルチキャストで送信する技術に加えて、光ファイバーの広帯域を生かして、その地域で視聴可能なデジタル放送の全チャンネルをまとめて送信する技術の研究も展示されていた。後者はともかく、前者は比較的実現と製品化が容易な技術と思われるので、実用化の期待も高い。

家庭で利用するサーバー型放送サービスについてのデモの様子。TVの下にあるのが大型のホームサーバー。家庭内の機器とつなぐ有線/無線LANやインターネット接続も備える
家庭で利用するサーバー型放送サービスについてのデモの様子。TVの下にあるのが大型のホームサーバー。家庭内の機器とつなぐ有線/無線LANやインターネット接続も備える
サーバー型放送サービスは家庭内で視聴するだけでなく、携帯端末に転送して視聴する使い方も提案されている。これは展示されていた携帯端末のデモ機。サイズはPlayStation Portable程度で、SDメモリーカードスロットや無線LAN機能を備えるようだ
サーバー型放送サービスは家庭内で視聴するだけでなく、携帯端末に転送して視聴する使い方も提案されている。これは展示されていた携帯端末のデモ機。サイズはPlayStation Portable程度で、SDメモリーカードスロットや無線LAN機能を備えるようだ

いかにもNHKという研究が、放送用ビデオカメラや映像伝送に関する技術だ。“ミリ波モバイルカメラ”と称する研究では、カメラから映像や電力のケーブルを廃して、取り回しやすいカメラを実現する研究を行なっている。撮影したデジタルハイビジョン放送用の映像は、ハガキ大サイズ(幅15×奥行き13×高さ4.3cm)に小型化されたJPEG2000方式のエンコーダーで符号化し、ミリ波帯の電波で送信される。このカメラを使うスタジオ内には、天井に送受信アンテナを設置して、カメラとスタジオ設備との片方向または双方向通信を行なう。映像伝送用の“本線系”は、カメラ側に2本、スタジオ側に4本のアンテナを設置し、無線LANの高速化技術にも利用されるMIMO技術を利用して160Mbpsのデータ通信速度を実現するという。現在はバッテリーと無線送受信機がかなり巨大で、ハンディータイプのカメラに使うにはさらなる小型化が必要とのこと。ミリ波を使った無線映像伝送では、トリノ五輪のスピードスケート中継にも利用された、レール上を移動する“レールカメラ”から無圧縮のハイビジョン映像を送信する“ハイビジョン・ミリ波伝送システム”も展示されていた。

“ミリ波モバイルカメラ”の展示機。左側面の巨大なユニットは送受信用の機器が収められている。バッテリーも大型のものを6基も使用する
“ミリ波モバイルカメラ”の展示機。左側面の巨大なユニットは送受信用の機器が収められている。バッテリーも大型のものを6基も使用する
カメラに搭載されているJPEG2000デコーダー。ほぼリアルタイムに近い速度での符号化〜復号化が可能
カメラに搭載されているJPEG2000デコーダー。ほぼリアルタイムに近い速度での符号化〜復号化が可能
トリノ五輪でも使われた“ハイビジョン・ミリ波伝送システム”の受信機など。60GHz帯を使い、高速走行するレールカメラから受信機に非圧縮ハイビジョン映像を伝送した
トリノ五輪でも使われた“ハイビジョン・ミリ波伝送システム”の受信機など。60GHz帯を使い、高速走行するレールカメラから受信機に非圧縮ハイビジョン映像を伝送した

またこのほかにも、放送用ビデオカメラの小型化を目指した有機撮像素子の展示や、映像とメタデータを組み合わせて、映像の内容や視聴する機器(リビングのTVや携帯電話など)、視聴者の傾向に応じてコンテンツを適切なものに変換表示する“AdapTV(アダプティービー)”といった研究の展示が、来場者の注目を集めていた。

(編集部 小西利明)


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