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加速するデジタルシネマ・ビジネス――配信と上映をめぐる世界の動向


2006年7月24日

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006・シンポジウムレポート

埼玉・川口市のSKIP(Saitama Kawaguchi Intelligent Park)シティで開催中の“SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006”において19日、“デジタルシネマ・ビジネス”について世界の最新動向を紹介する国際シンポジウム“加速するデジタルシネマ・ビジネス〜配信と上映をめぐる世界の動向〜”が会場内映像ホールで開かれた。今回のテーマは、日本を含め世界的な規模で進展しているデジタルシネマ・ビジネスにおいて重要な“配信”と“上映”に各国がどのように取り組んでいるか。また、どのような問題があるのかについて、熱いディスカッションが行なわれた。

シンポジウムのテーマ“加速するデジタルシネマビジネス”
今回のシンポジウムテーマは“加速するデジタルシネマビジネス”


英・米・日からデジシネ配信・上映に携わる第一人者が集結

シンポジウムは英ユニーク・デジタル・マーケティング(Unique Digital Marketing)社のビジネス・ディベロップメント・ディレクターのパトリック・フォン・シコウスキー(Patric von Sychowski)氏がモデレーターを務め、米国からはアクセス・インテグレイティッド・テクノロジー(Access Integrated Technologies)社のチェアマン/CEOのバッド・メイヤー(Bud Mayo)氏とワーナー・ブラザース エンターテイメント(Warner Brothers Entertainment)社の北米ワールドワイドアンチパイレシイ・オペレーションズのバイス・プレジデント、ヨタム・ベン・エイミー(Yotam Ben-Ami)氏、日本からは日本電信電話(株)(NTT)の未来ねっと研究所メディアイノベーション研究部長の藤井哲郎氏が登壇した。

現在、米国のデジタルシネマ規格策定団体である“DCI”(Digital Cinema Initiatives)(※1)による規格化がほぼ完了しており、現実的なデジタルシネマ普及に向けた、プロジェクトやビジネスが世界各国で展開されつつある。とりわけ“配信”と“上映”に関するデジタル化は、デジタルシネマ・ビジネスにとっては不可欠な部分といえる。今回登壇した4氏は、それぞれがデジタルシネマ・ビジネスに関する重要なプロジェクトやビジネスを進めており、シンポジウムではそれぞれの立場での取り組みについてプレゼンテーションが行なわれた。ここでは特に日本で実証実験が推進されているネットワーク配信技術“4K Pure Cinema”に関する藤井氏の講演を中心にお送りする。

※ DCI 従来のアナログフィルムを用いない、最先端技術を活用した上映方式であるデジタルシネマへの移行が世界的な進展を見せている。DCIは、このデジタルシネマの配給および映写に関する技術仕様を制定するために、2002年に7大メジャースタジオによって設立された業界団体。DCIは4年の検討期間を経て、2005年7月に新たなデジタルシネマの技術仕様を“DCI仕様”として発表した。公式サイトはhttp://www.dcimovies.com/

パトリック・フォン・シコウスキー氏
世界最大のシネアド(劇場CM)会社であるユニーク・デジタル・マーケティングにおいて、シネアドの規格化やノルウェーでのシネアドと劇場のデジタル化に取り組んできたパトリック・フォン・シコウスキー氏

シコウスキー氏は、ノルウェーで進められている“NORDIC(Norway's Digital Interoperability in Cinemas)プロジェクト”について説明した。NORDICプロジェクトは氏の出身国であるノルウェー国内のシアターすべてをデジタルシアター化するプロジェクトだ。続いて、メイヤー氏が自身CEOを務めるAccessITの取り組みについて説明した。同社は米国内で積極的にシアターのデジタル化を進めている企業で、この分野におけるパイオニアであるとともに第一人者と言える。メイヤー氏は「米国におけるデジタルシネマの導入数を今年度末には1800スクリーン、2007年10月までに4000スクリーン、そして2009年までにカナダ、米国において合計1万スクリーンを展開する」と意気込みを語った。



バッド・メイヤー氏
フィルムからデジタルへの転換におけるリーディング・カンパニーである、AccessITのバッド・メイヤー氏

エイミー氏はワーナー・ブラザースにおいて、いわゆる“海賊盤”と言われる映画作品の違法コピー問題に取り組んでいる。取り上げる話題を意識してなのか、彼のプレゼンテーションではプレゼン画面ならびに当人の撮影を事前に禁止する、とされた。違法コピーを行なう手段としては、劇場にカムコーダーを持ち込んで盗撮する大胆な方法や劇場内のディスクから盗むといったものがあるという。対策としてはナイトヴィジョンなどでカムコーダーの存在を検知したり、透かし技術を使って、盗撮が行なわれた劇場を特定する、といった方法が取られている。デジタルシネマが普及することにより、ディスクから盗むことはなくなっていくが、逆にデジタルシネマで上映されることで、より高画質なコピーが可能になることが懸念されていると語った。

ヨタム・ベン・エイミー氏
ワーナー・ブラザース・エンターテイメントにおいて、不正コピー防止に関する業務と北米全域での監察、および世界的な不正コピー防止団体の運営やプロジェクトも手がけるヨタム・ベン・エイミー氏


日本のデジシネ配信・上映はとっくに始まっている!

4K Pure Cinemaの取り組み
4K Pure Cinemaの取り組みは世界でも初めての試み

藤井氏は日本における“4K Pure Cinema”に対する取り組みについて説明した。現在、日本国内のシアターでは50台ほどのデジタルプロジェクターが導入されており、その主流は“2Kデジタルシネマ”(2048×1080ピクセル)だが、“4K Pure Cinema”では、“4Kデジタルシネマ”(4096×2160ピクセル/800万画素クラス)を導入しているシアターを使用して、実際に営業を行ないながら実用化実験を進めている。



藤井哲郎氏
NTT未来ネット研究所メディアイノベーション研究部長で工学博士の藤井哲郎氏
4Kデジタルシネマ
4KデジタルシネマはHDTVの4画面分で、より高画質で映画を楽しむための次世代の規格だ

2005年10月にスタートした“フェーズ1”では、米ワーナー・ブラザース、ワーナー・ブラザース映画、西日本電信電話(株)(NTT西日本)、東宝(株)の5社による世界初のデジタルシネマ共同トライアルを立ち上げ、“ティム・バートンのコープスブライド”を皮切りに、“ハリー・ポッターと炎のゴブレット”、“Vフォーバンデッタ”の4Kデジタルシネマ配信・上映を行なった。“フェーズ2”では新たに米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(Sony Pictures Entertainment)社、(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、東日本電信電話(株)(NTT東日本)、(株)ワーナー・マイカルが加わり、今年5月に“ダ・ヴィンチ・コード”、6月に“ポセイドン”の4Kデジタルシネマ配信・上映を行なった。そして今月現在では“フェーズ3”として、米パラマウント・ピクチャーズ(Paramount Pictures)社、米United International Pictures社(UIP)が加わり、“M:I:3”の4Kデジタルシネマ配信・上映を実施している。このM:I:3は2Kデジタルシネマでパッケージされたものを4Kデジタルシネマに変換しており、こうした手順でも問題なく配信・上映を行なえることを実証した。

4K Pure Cinemaは2005年10月に“フェーズ1”がスタート
4K Pure Cinemaは2005年10月に“フェーズ1”がスタート。現在も進行中だ
これまでデジタル配信・上映された6作品
4K Pure Cinemaでは、これまで6作品のデジタル配信と上映が行なわれている

配信・上映のフローとしては、米国ロサンゼルスにあるワーナー・ブラザースの送出センター“GDMX”(Global Digital Media Xchange)から転送レート1Gbpsで送信されたデジタル映像データをNTTの横須賀配信センターで受信し、この段階で吹き替え、字幕を挿入。東京と大阪の国内配信センターに送る。ここで鍵作成管理を実施し、認証されたデータを、東京ではTOHOシネマズ六本木ヒルズ、シネマメディアージュ(お台場)、ワーナー・マイカル・シネマズ 板橋に、大阪はTOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ高槻の計5館に送信し、上映を行なっている。キーセンターでは想定されるさまざまなキーの運用実験も併せて行なわれている。

4K Pure Cinemaの現在のフェーズ
4K Pure Cinemaは、トライアルシステムでの日米の協力による実証実験を重ね、デジタルシネマの実用化を目指す
4Kプロジェクターとコントロールボックス、セキュアメディアボックス
TOHOシネマズ六本木ヒルズに導入されている4Kプロジェクターとコントロールボックス、セキュアメディアボックス


ノルウェーは世界同時公開の犠牲になった

プレゼンテーション後には、4氏全員によるディスカッションと会場を交えてのQ&Aが行なわれた。

4名のキーマン
世界中から集まった4名のキーマンによるシンポジウムが行なわれた

シコウスキー氏は配信、上映を行なう上でのローカリゼーション(翻訳作業)の難しさを指摘した。NORDICプロジェクトにおいて、“ダ・ヴィンチ・コード”の 4Kデジタルシネマ配信・上映を行なおうとしたところ、制作が追いつかずにノルウェー語の字幕をつけることを断念した経緯があった。シコウスキー氏は「ノルウェーは“世界同時公開における問題”の犠牲になったわけです」と語った。

パリでディレクターをやっているという参加者からは、デジタルシネマと35mmフィルムの違いは? という根本的な質問が飛び出した。メイヤー氏は「(デジタルが)はるかにいいですね。高解像度で画像が美しいだけではなく、(上映回数や経年による)画質や音質の劣化が起きないこともあります。1回あたりのプリントのコストも低く、劣化もおきないんです」と語った。藤井氏は「デジタルが(従来の35mmフィルムより)奇麗というわけではないんですよ。デジタルなら品質を保ったまま伝える(伝え続ける)ことができるんです」とした。

映画料金への反映や、また違法コピーに対する法律的な対策についての質問に対してベン・エイミー氏は「取り締まる法律はひとつの手段ではあるが、それだけでは解決しないこともあります」と語った。

(千葉英寿)


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